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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)3843号

原告

笹原義一

右訴訟代理人弁護士

木村晋介

鷲見賢一郎

被告

帝都自動車交通労働組合 池袋ハイヤー支部

右代表者支部長

橋本鉱司

右訴訟代理人弁護士

中野新

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金五万円及びこれに対する昭和五五年四月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  被告は、訴外帝都自動車交通株式会社(以下「訴外会社」という。)の従業員をもって組織する訴外帝都自動車交通労働組合(以下「帝労」という。)の一支部(池袋ハイヤー支部、以下「被告」又は「池ハイ支部」という。)で、代表者は支部長橋本鉱司であり、原告は、帝労の組合員で池ハイ支部に所属するものである。

2  被告は、昭和五四年六月二〇日ころ原告が帝労の組合員多数に別紙のようなビラ(以下「本件ビラ」という。)を配布した行為が帝労の支部規約七条二号(支部の統制、秩序をみだした行為のあったとき)、三号(支部の名誉を著しく傷つける行為のあったとき)に該当するものとして、昭和五五年三月七日開催の懲罰委員会において原告を戒告処分に付するのが相当である旨の議決(以下「本件懲罰委員会議決」という。)をなし、これに基づき、同月二四日開催の幹事会において原告を戒告処分に付する旨の決定(以下「本件処分」という。)をなした。そして、被告は、同月三一日から一週間、本件処分がなされた旨を記載した掲示物を池ハイ支部のハイヤー乗務員控室に掲示した。

3  しかし、被告のなした本件処分は以下に述べるとおり違法なものであり、被告は故意又は過失によって右処分及びその掲示行為に及び、その結果、原告に甚大な精神的苦痛を与えたものであって、原告の被った右の精神的苦痛を慰謝するためには、金五万円の慰謝料を支払うのが相当である。

(1) 原告は、被告から懲罰委員会の開催について電話で連絡を受けたので、後日のトラブルを避けるため、文書によって懲罰委員会開催の通知をするよう要求したが、被告はこれに応じて原告に懲罰委員会開催の通知及び開催理由の開示を書面によってすることをせず、そのため原告は、懲罰委員会に出席して弁明、防禦を尽くすことができなかった。このように、被告のなした本件懲罰委員会議決は、原告に弁明、防禦の機会を全く与えず、原告欠席のまま一方的になされたものであり、そのような懲罰委員会議決に基づく本件処分は、手続的にみて違法である。

(2) 原告が配布した本件ビラの作成名義は、別紙のとおり、「全自交東京地連帝労池ハイ支部 帝労を強くする会連絡会議 世話人・笹原義一」である。右「帝労を強くする会」は、当時現実に存在したもので、原告が団体を仮装したものではないし、仮に原告が団体を仮装して本件ビラを配布したとしても、そのこと自体何ら被告の名誉を毀損するものではなく、帝労が弱い組織であるかの如き印象を与えるものでもない。また、被告の支部名を「帝労を強くする会」の上に表示したのは、当時「帝労を強くする会」が帝労の各支部ごとに組織されていたからにすぎず、「全自交東京地連帝労池ハイ支部」名を表示したからといって、その下に間を空けて「帝労を強くする会」と表示し、次いで、連絡会議世話人たる原告の個人名が明示され、且つ、連絡先として原告個人の自宅の電話番号が表示されているのであって、その表示自体から原告個人が作成名義人であることが明らかであり、被告名義のビラといえないことは勿論、被告が原告の主張に賛同しているとか、「帝労を強くする会」が被告の承認を受けているなどと誤認されるおそれもない。のみならず、本件ビラ配布までの間、原告は組合役員選挙などにおいて組合執行部の方針を批判する立場を明らかにしており、そのことは組合内部に知れわたっていること、本件ビラの内容も明らかに執行部の方針に対する批判であることなどをも考え合わせれば、本件ビラは、帝労本部ないし被告の執行部に批判的な原告個人が作成したことは一目瞭然である。

また、本件ビラの内容は、別紙のとおりであって、夏冬一時金の明朗な配分、タクシー部門の組合員に対する残業手当の不払問題などを取り上げ、帝労幹部の方針を批判し、現在の帝労の民主化を訴えたものである。帝労の各支部は、それぞれが独立し、互いに干渉しないものではあるが、帝労規約三条二号には「各支部相互の密接な提携を図るため情報経験の交換周知をはかる」ことが組合の目的とされており、組合員同士が相互に連絡を取り合って労働条件の向上に努力することは組合員として当然の権利である。それは、被告の名誉を毀損したり、その統制を乱したりするものではなく、それが帝労の方針や戦術に反するものであっても同様である。また、帝労規約三六条三号によれば、組合員は組合役員の言動を自由に批判することができることになっており、原告が帝労幹部の方針を批判することもまた組合員として当然の権利である。のみならず、原告が本件ビラにおいて述べている内容は、真実の事実を述べ、正しい意見を述べているのであって、何ら非難されるような点は見当らない。

更に、原告は、被告に本件ビラの配布中止を約束したようなこともない。原告が訴外会社の竹橋営業所前で本件ビラの配布をしていたところ、被告代表者橋本ほか二名がこれを妨害したので、原告はトラブルを避けるため自主的に本件ビラの配布を中止したにすぎない。

しかるに、被告は、被告支部名を不当に使用したうえ、その内容も不当である本件ビラを原告が配布し、しかも一たん被告に配布中止を約束しながら再度本件ビラを原告が配布したことは、被告の名誉を著しく毀損し、その統制を乱したものであるとして本件処分に及んだ。しかし、原告の本件ビラ配布行為は、前記のとおり、被告の名誉を傷つけるものでもその統制を乱すものでもなく、被告のなした本件処分は、表現の自由を保障する憲法二一条、自主的な組合活動を保障する労働組合法の精神、前記帝労規約の各条項等に違反するものである。

4  よって、原告は被告に対し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)として金五万円及びこれに対する不法行為の日ののちである昭和五五年四月七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求の原因に対する被告の認否及び主張

(認否)

1 請求の原因1及び2の事実は認める。

2 同3の事実中、被告から原告に懲罰委員会開催について電話による通知がなされたこと、原告から被告に懲罰対象行為を文書によって明示するよう要求があったが、被告は原告に対し文書によって懲罰対象行為の明示をしなかったこと、懲罰委員会は原告欠席のまま開催され、本件懲罰委員会議決がなされたこと、本件ビラの作成名義及び内容の記載が別紙のとおりであったこと、原告主張の如き条項が帝労の規約中に存することはいずれも認めるが、その余の事実及び主張はすべて争う。

(主張)

1 懲罰委員会は、昭和五四年八月三日から昭和五五年三月七日まで合計五回開催され、この間委員会は原告に対し、口頭をもって懲罰委員会の開催を通知し、再三委員会に出席して弁明をするよう求めた。しかるに、原告は、一たんは都合のよい日を連絡すると言って委員会への出席を約束しながら、後には文書による懲罰対象行為の明示を要求して委員会への出席を拒否するに至った。そこで、懲罰委員会は、やむなく原告不出頭のまま審議を遂げ、戒告処分相当の議決をなしたものである。そもそも、被告は原告に懲罰委員会開催の通知を書面によってしなければならない理由はなく、原告は、口頭による委員会開催の通知を受けたのに、あくまでも文書による通知に拘泥して委員会に出席しなかったものであるから、弁明、防禦の機会は十分に与えられていたのであり、右弁明、防禦の権利はこれを放棄したものというべきである。

2 原告は、昭和五四年六月二〇日午前一時三〇分ころ、訴外会社の竹橋営業所前路上等において、事前に被告に何らの通告、相談もせず、突然、駐車、休憩中の訴外会社タクシー部門の従業員を中心に本件ビラを配布した。被告代表者橋本は、同日朝組合員から原告の行動の報告と配布された本件ビラの提示を受けたので、同日午前九時ころ原告に対し、その真意の釈明及び被告機関の発行であると誤認される蓋然性の高い発行者名の使用を避けるべきことを求め、タクシー部門の残業問題についてのビラの内容は、労働時間の厳守、超過労働の防止に取り組んでいる帝労の運動を阻害する危険があることを指摘して、以後の本件ビラの配布中止を要請、説得した。当初ビラ配布中止要請に頑として応じなかった原告も、橋本支部長の説得によりようやくこれを受け容れ、残余のビラ三〇〇〇枚は今後配布しないと言明した。ところが、原告は、右言明に反し、その直後に原告の自宅付近である東上線坂戸駅周辺において、タクシー運転手や通行人に右残余のビラを配布したものである。

3 原告は、「全自交東京地連帝労池ハイ支部 帝労を強くする会連絡会議 世話人笹原義一」名義の本件ビラを被告に無断で作成、配布したものであるが、被告支部には「帝労を強くする会」や「連絡会議」は存在せず、したがって、その「世話人」もまた存在しないものであり、それにも拘らず右の如きビラを作成、配布したことは、「帝労を強くする会」を偽装することにより、ビラ配布を受ける者に帝労が弱い組織、即ち御用組合であるかの如き印象を与えるものである。また、「全自交東京地連帝労池ハイ支部」名をことさら冠することにより、全自交東京地連、帝労、池ハイ支部の内部に組織的対立があり、原告と共同、協力関係にある組織が存在すること、或いは、池ハイ支部自体が原告の主張に賛同し、原告の主張を擁護するものであるかの如く誤認させるものである。もし、原告が主張する如く原告の所在を示すために池ハイ支部の名称を使用するのであれば、「池ハイ支部員」とか「池ハイ支部所属」とかにすべきであり、「池ハイ支部帝労を強くする会」の名称を使用することは、池ハイ支部内において機関決定を得たか、若しくはその承認を得たものであると僭称することに他ならない。

4 のみならず、原告の配布した本件ビラの内容は、帝労及びそのタクシー部門の各支部の残業規制の運動方針を歪曲し、不当な中傷を加えたものであって、帝労内部に不団結をもたらそうとするものである。即ち、訴外会社にはハイヤー部門とタクシー部門とがあり、タクシー部門においては、ハイヤー部門の場合と異なり、労働時間の終期(帰庫時間)の管理が運転者である労働者自身に委ねられている面があり、帰庫時間を各運転者の任意に放置すると、正規の労働時間後に重点を置いて専ら割増賃金の獲得をめざして働く傾向を助長しないとも限らない。かくては、正規の労働時間に働き、過重労働を根絶しようとするあるべき労働形態へ向けての進路に反することとなる。このような観点から、帝労及びそのタクシー部門の各支部は、残業を努めて抑制し、時間内労働により適正な賃金を獲得しようとして運動を続けてきたものであって、原告の本件ビラの配布によって、帝労及びそのタクシー部門の各支部の内部に右と反対の行動をとる組合員が増加し、組合の不団結をもたらしかねないものであった。

しかも、原告は、帝労の池ハイ支部所属の組合員であるのに、池ハイ支部から独立した存在である池袋タクシー支部の問題について、池袋タクシー支部の組合員をも煽動したものであった。

5 以上の次第で、原告は本件ビラ配布行為により、組合本部及び他支部、殊に池袋タクシー支部の被告に対する誤解を生じさせ、被告をしてこれらに対し陳謝せざるを得なくする等したものであって、被告の名誉を著しく傷つけ、被告支部の統制、秩序を乱したものであり、そのようなことから、被告は原告を本件処分に付したものである。

三  被告の主張に対する原告の認否

被告の主張中、被告から原告に懲罰委員会開催について口頭による通知がなされたこと、原告から被告に文書によって懲罰対象行為を明示するよう要求がなされたが、被告はこれに応じなかったこと、懲罰委員会は原告欠席のまま審議を遂げ、本件懲罰委員会議決をなしたこと、原告が、主張の日時、場所において、事前に被告に何らの通告、相談もせず、突然、駐車、休憩中の訴外会社タクシー部門の従業員を中心に本件ビラを配布したこと、被告代表者橋本が、主張の如く組合員から原告の行動の報告と配布ビラの提示を受け、原告に以後のビラ配布中止を要請、説得したこと、原告の配布したビラが別紙のとおりのものであったことは認めるが、その余はすべて争う。

第三証拠(略)

理由

一  被告が訴外会社の従業員をもって組織する帝労の一支部(池ハイ支部)で、代表者は支部長橋本鉱司であり、原告が帝労の組合員で池ハイ支部に所属すること、被告が、昭和五四年六月二〇日ころ原告が帝労の組合員多数に本件ビラを配布した行為が支部規約七条二号(支部の統制、秩序をみだした行為のあったとき)、三号(支部の名誉を著しく傷つける行為のあったとき)に該当するものとして、昭和五五年三月七日開催の懲罰委員会において原告を戒告処分に付するのが相当である旨の本件懲罰委員会議決をなし、これに基づき、同月二四日開催の幹事会において原告を戒告処分に付する旨の本件処分をなしたこと、被告が、同月三一日から一週間、本件処分がなされた旨を記載した掲示物を池ハイ支部のハイヤー乗務員控室に掲示したことは、いずれも当事者間に争いがない。

二  そこで、本件処分の違法性につき判断する。

1  懲罰委員会開催手続の違法について

(1)  原告は、被告のなした本件処分は、原告からの書面による懲罰委員会開催通知の要求があったにも拘らず、これに応ぜず、原告欠席のまま一方的になされた本件懲罰委員会議決に基づくものであり、このように、原告に弁明、防禦の機会を全く与えなかった懲罰委員会議決に基づく本件処分は手続的に違法なものである旨主張するので、まずこの点につき判断する。

(2)  (証拠略)を総合すると、懲罰委員会は、昭和五四年八月三日から昭和五五年三月七日までの間に合計五回開催され、その間、委員会は原告に対し、口頭をもって再三にわたり委員会の開催を通知し、その出席を求めたこと(被告から原告に口頭で委員会開催通知がなされたことは当事者間に争いがない。)、被告は、懲罰委員会開催に先立ち、池ハイ支部員による明番集会において橋本支部長が全支部員に原告の本件ビラ配布行為があったことを説明し、全支部員から原告の処置についての意見を聴取しており、右明番集会には原告も出席していたこと、被告はまた、懲罰委員会開催に先立ち、池ハイ支部のタクシー乗務員控室に懲罰委員会開催についての掲示をもなしたこと、懲罰委員会からの口頭による委員会開催通知を受けた原告は、当初は所用で出席できない、都合のよい日を連絡するなどと答えていたが、やがて委員会の開催日、開催理由等を文書をもって通知するよう要求するようになり、以後、委員会からの再三の連絡にも拘らず、文書による通知がない限り委員会には出席しないとの態度をとるに至ったこと(原告が被告に文書による懲罰委員会開催の通知をなすよう要求したことは当事者間に争いがない。)、懲罰委員会は、改めて原告に文書による懲罰委員会開催通知をせず、原告欠席のまま委員会を開催し、本件懲罰委員会議決をなしたこと(この事実は当事者間に争いがない。)、帝労の支部規約によれば、懲罰委員会の審議に当たっては、「本人の意見を充分に聴取しなければならない」との規定(一〇条)が存するものの、委員会開催通知についての規定や、本人が委員会への出席を拒否した場合などについての規定は全く存在しないこと、被告支部における明番集会等の開催通知は、それまで掲示の方法で処理されており、わざわざ文書によって開催通知をなすような慣例はなかったことが認められ、右認定を左右する証拠はない。

(3)  右事実によれば、被告は、本件懲罰委員会議決をなすに当たり、昭和五四年八月三日から昭和五五年三月七日までの間、再三にわたり、原告に審議の日時及び対象を明示して委員会の開催を通知し、その出席を求めていたものであって、原告が委員会に出席し、弁解、防禦を尽くす機会はこれを十分に与えていたものというべきであり、この点に何ら違法なところは見当らない。原告は、被告が原告の文書による委員会開催通知の要求に応ぜず、原告欠席のまま本件懲罰委員会議決に及んだことを論難するが、委員会開催の通知を文書によってしなければならない理由はなく、弁解、防禦の機会を十分に与えられながら、あくまで書面による通知を要求して委員会に出席しない原告に対し、被告が原告欠席のまま本件懲罰委員会議決をなしたことは、まことにやむを得ない措置であったということができ、前記帝労支部規約一〇条もこのような場合にまで必ず本人の出席がなければ懲罰委員会の審議及び議決をなし得ないとの趣旨を含むものではないというべきである。

原告の懲罰委員会開催手続の違法についての主張は理由がない。

2  名誉毀損及び統制違反不存在の主張について

(1)  原告は、被告のなした本件処分は、原告に何ら被告の名誉を毀損したり、その統制を乱したりする行為がなかったのに、これがあるものとしてなされた違法な処分である旨主張するので、次にこの点について判断する。

(2)  原告が配布した本件ビラの作成名義及び内容の記載が別紙のとおりであることは当事者間に争いがないところ、(人証略)の各証言、原告本人及び被告代表者の各尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、原告は、昭和五四年六月二〇日午前一時三〇分ころ、訴外会社の竹橋営業所前路上等において、被告に何ら事前の通告、相談もせず、突然、駐車、休憩中の訴外会社タクシー部門の従業員を中心に本件ビラを配布したこと(この事実は当事者間に争いがない。)、被告代表者橋本は、同日午前九時ころ、組合員から原告が本件ビラの配布をしたことの報告と配布された本件ビラの提示を受けたので、原告に対し、以後本件ビラの配布を中止するよう要請し、説得をしたこと(この事実は当事者間に争いがない)、原告は、被告の機関を通さずに池ハイ支部名を使用するのはおかしい旨の橋本支部長の説得を受け容れ、結局、同支部長に対し、残余のビラは三〇〇〇枚位あるが、以後は配布しない旨の約束をしたこと、ところが、原告は、右の約束に反し、その直後に坂戸付近で帝労の他支部員らに本件ビラを配布したこと、帝労においては、タクシー運転者の帰庫時間を各運転者の任意に放置すると、正規の労働時間後に重点を置いて専ら割増賃金の獲得をめざして働く風潮を助長しないとも限らず、かくては、適正な労働時間の確保と過重労働の根絶ができず、労働者の健康の維持、労働災害の防止がはかれないところから、午前二時帰庫を守ることに努め、労働時間を短縮し、時間内労働により適正な賃金を獲得しようとして運動を続けてきたものであり、本件ビラの内容はこのような方針に反するものであったこと、被告は、原告の本件ビラ配布により組合本部及び他支部から苦情の申出を受け、これらに対し謝罪せざるを得なかったことが認められ、右認定に反する原告本人の供述部分は前掲各証拠に照らし措信できず、他に右認定を左右する証拠はない。

(3)  右事実によれば、原告の配布した本件ビラは、原告の氏名の上にことさら「全自交東京地連帝労池ハイ支部 帝労を強くする会連絡会議 世話人」の文言を冠することにより、これを帝労の他支部の組合員が一見すると、池ハイ支部がそれを作成したものであるか、或いは、帝労を強くする会若しくは原告個人が池ハイ支部の承認を受けて作成したものであるかの如く誤認しかねないものであり、その記載内容と相まって、池ハイ支部又は帝労を強くする会若しくは原告が池ハイ支部の承認を受けて帝労の方針に反対し、ビラ記載の見解のもとに活動しているかの如き印象を与えかねないものというべきである。しかも、原告は、帝労の前記のような運動方針を熟知しながら、事前に被告の了解を得ることなく、突然、右方針に反する本件ビラを帝労の組合員多数に配布し、一たんは被告の配布中止要請を受け容れて以後の配布中止を約束しておきながら、その直後に約束に反して本件ビラを帝労の組合員に配布したものであり、その結果、被告は組合本部及び他支部から苦情を受けて謝罪せざるを得なかったことが明らかである。以上の諸点に照らせば、原告のなした本件ビラ配布行為は、単に組合の方針又は組合執行部に対する批判に止まるものではなく、その内容と方法において不当なものといわざるを得ず、原告に帝労の支部規約七条二号(支部の統制、秩序をみだした行為のあったとき)、三号(支部の名誉を著しく傷つける行為のあったとき)に該当する事由のあることは明らかである。そして、原告の受けた処分が戒告処分であることをも考慮にいれると、本件処分は相当性の範囲を逸脱しておらず、本件処分に憲法二一条違反等原告主張のような違法な点はないというべきである。

原告は、「全自交東京地連帝労池ハイ支部」名を本件ビラに表示したからといって、その下に間を空けて「帝労を強くする会」と表示し、次いで連絡会議世話人たる原告の個人名が明示され、且つ、連絡先として原告個人の自宅の電話番号が表示されているのであって、その表示自体から原告個人が作成名義人であることが明らかであると主張する。しかし、本件ビラ配布行為につき問題とすべきは、純客観的に誰の作成したビラとみられるかということではなく、一見して前記の如き誤認、混同を与えるおそれがあるかどうかであって、本件ビラには前記のとおり右のような誤認、混同を与えるおそれがあり、原告としては、被告が主張する如く、「池ハイ支部所属」とか「組合員又は支部員」と表示するなどしてこのような事態を避けるべきであったというべきである。また、原告は、それまでの原告の行動に照らせば、組合員にとって本件ビラが原告個人によって作成されたことが明らかであって、前記誤認、混同のおそれはない旨主張するが、(人証略)によれば、帝労の組合員は二五支部で約二七〇〇人もいることが認められ、前記のように被告が組合本部、他支部から本件ビラ配布につき苦情を受けるに至ったことをも考え合わせると、組合員のすべてにわたり前記誤認、混同のおそれがなかったものということはできない。

3  以上の次第であるから、被告のなした本件処分には何ら違法な点はなく、したがって、その掲示行為もまた違法性がないといわざるを得ず、原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないことに帰着する。

三  よって、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山下満)

夏冬一時金の具体的配分方法を事前に公開させ

午前2時以降の深夜残業手当の未払分を支払せよう!!

みなさん連日明方に至るまでの勤務御苦労さまです。私共は、帝労の組合民主化と、組合幹部(支部長クラス)に対する賃金保障が労働組合の弱体化と、御用化につながることを危惧し、その他、ハイヤータクシー技工職員の労働時間の短縮、夏冬一時金の配分方法の公開(事前に)、全職種の残業手当の正確な支払、組合員の組合活動の自由等を求めて昭和五十二年二月二十三日より東京都地方労働委員会において、今日に至るまで連続十一回もの審理を重ねてまいりました。

こうした経過のなかでタクシー部における、午前二時以後の残業手当の未払問題も重大な問題となっております。たしかに、その筋の達しにより午前二時帰庫は守らねばなりません。しかし、午前二時直前の無線配車(業務命令)や乗客の要望(遠路客)により、やむなく午前四時、五時頃まで仕事をして帰庫して、ペナルティとして残業手当をカットされたのではまったく、不合理かつ、不当なことです。事実このことに関しては、北海道地労委、東京の数社、広島地方労働基準局等ではその不当性が認められその支払は開始されております。なお、この残業手当の未払問題に関しては、前記都労委の審理のなかで、帝都自動車交通株式会社の代表取締役の代理として証言した、右、常務取締役小尾三五郎氏もその不合理性を認め「本人の請求」及び監督官庁の勧告があれば、右、残業手当を支払うと明言しております。

みなさん、組合員各個人の請求分が月に一万円前後と計算し、もし会社が賃金請求権の時効を援用したとしても、組合員一人当り二十四万円になります。帝都のタクシー部員が一三〇〇人として、三億一千二〇〇万円もの賃金が未払となります。なぜこのような重大なことが放置されてきたのでしょう。ともかく働いた分は請求しましょう。

もちろん、りっぱな組合(そのむね帝労鈴木長蔵氏名で都労委へ上申書が出されております。)があるのですから、それぞれ組合を通じ会社に請求しましょう。もし、組合が消極的なら、組合員個有の権利として、各個人が所轄の労働基準監督署へ未払賃金の実体を申告し、会社に支払せましょう。このような行動は、労基法、労組法、憲法で保障されております。

帝都のみなさん、大和のみなさん、日交のみなさん、国際のみなさん各社のみなさん、朝まで働いてきた分は、その分として正規に残業手当を会社に支払せましょう。

「権利のうえにねむる者は救わず」という有名なことわざもあります。当然の権利は正々堂々と行使しましょう。なお大手四社の右未払賃金を合計すると、概算で十数億円にもなりロッキード事件の田中や、グラマン事件の松野へ流された金より多くなるのです。このような脱法行為は法治国家として許してはなりません。労働者の基本的権利獲得の為最後までがんばりましょう。

昭和五十四年六月二十日

右の件の御連絡は左記へ

全自交東京地連帝労池ハイ支部 帝労を強くする会

連絡会議 世話人 笹原義一

電話 〇四九二―三二―一八六〇

組合員各位 殿

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!